第三者からの情報取得手続

養育費を払わない相手の勤務先・預貯金を調べる手続(第三者からの情報取得)

調停調書や公正証書で取り決めた養育費が支払われないとき、裁判所を通じて相手(債務者)の勤務先・預貯金・不動産等の情報を得られる「第三者からの情報取得手続」があります。申立先・取得できる情報の種類・要件を、裁判所の公式資料で確認します。

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養育費が支払われないときに使える「第三者からの情報取得手続」について、何のための手続きか、取得できる情報の種類と養育費請求権者が使える範囲、申立先・要件・手数料の三つに絞って確認します。実際に差押えを申し立てる手続き・書類の作成方法は扱いません。この手続きの前提となる債務名義(公正証書等)の作成費用の補助は養育費の公正証書作成費用助成・保証料補助のページで確認できます。

この手続きだけでは、養育費は回収できません。

第三者からの情報取得手続は、債務者の財産を調査するだけの手続きです。実際に養育費を回収するには、この手続きで判明した情報をもとに、債権差押えなどの強制執行を別途申し立てる必要があります(下記「ワンストップ執行手続」を除く)。

第三者からの情報取得手続とは

金銭債権について債務名義(確定判決・調停調書・公正証書など)または一般先取特権を有する債権者が、債務者の不動産・給与(勤務先)・預貯金・振替社債等に関する情報を、それらの情報を保有する第三者(登記所・勤務先・銀行等)から提供してもらう手続きです。取得できる情報は次の4種類です。

取得できる情報の種類
種類内容
不動産情報債務者名義の不動産(土地・建物)の所在地や家屋番号
勤務先情報債務者に対する給与の支払者(勤務先)の名称や住所
預貯金情報債務者の有する預貯金口座の情報(支店名、口座番号、額)
振替社債等情報債務者名義の株式・社債・国債等の銘柄及び額または数

養育費請求権者が使える情報の範囲

どの情報を申し立てられるかは、債権者の立場によって異なります。養育費請求権者には、「子の監護の費用を有する者」として一般先取特権が認められています(民法306条3号、308条の2)。不動産情報・預貯金情報・振替社債等情報は、この一般先取特権に基づいて申し立てられます。

勤務先情報だけは条件が別です。申し立てられるのは、次のどちらかに当たる債権者に限られます。(1) 養育費・婚姻費用などの請求権、または人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権について、執行力のある債務名義を持つ債権者。(2) 子の監護の費用に係る一般先取特権を持つ債権者。貸金等の一般の債務名義や、養育費以外の一般先取特権を有する債権者は、勤務先情報の申立てはできません。

申立ての前提となる要件

不動産情報・勤務先情報の申立てには、申立ての日から3年以内に「財産開示期日」が実施されたことが要件になります。財産開示期日を実施した裁判所に申請して、実施されたことの証明書を取得し、申立てに添付する必要があります。一方、預貯金情報・振替社債等情報の申立てには、この財産開示手続の前置要件はありません。

申立先・費用

申立先は、債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。手数料は1個の申立てにつき1,000円(民事執行予納金・郵便料は別途、裁判所ごとに異なる)で、預貯金情報・振替社債等情報の申立てには、これに加えて第三者1名ごとに2,000円の予納金が必要です。同じ債務者でも、対象となる財産の種類(不動産・勤務先・預貯金・振替社債等)ごとに別の申立書を作成し、別事件として申し立てます。

情報が届くまでの流れ

申立書と添付書類から要件が満たされていると判断されると、裁判所は「情報提供命令」を発令します。命令が確定すると、第三者(勤務先・金融機関・登記所など)に情報提供命令正本が送付され、第三者は執行裁判所に対して書面で情報を提供します。提出期限の定めはありませんが、基本的には2週間程度が一つの目安です。第三者が作成した情報提供書の写しは、執行裁判所を経由するか第三者から直接、申立人へ送付されます。

養育費に限って使える「ワンストップ執行手続」

令和8年4月から、養育費等の扶養義務に係る定期金債権に基づいて債務者の給与等を差し押さえようとする場合、財産を調査する情報取得手続と、その結果判明した給与の差押え手続を1回の申立てでできる「ワンストップ執行手続」が始まりました。仕組みは次のとおりです。給与債権の情報取得を申し立てるとき、債務者に対して3年以内に財産開示期日が実施されていれば、同時に、判明した給与債権の差押命令も申し立てたものとみなされます。手数料は、給与債権に係る情報取得事件が原則1,000円、差押命令事件が原則4,000円で、両方を同時に申し立てる場合の合計は情報取得1,000円・差押命令8,000円になります。

ワンストップ執行手続を希望しない場合は、情報取得手続の申立てと併せて「ワンストップ執行手続の利用を希望しない旨の上申書」を提出することで、情報取得手続だけを申し立てることもできます。

実際の申立書の作成・差押えの実施は、このページでは扱いません。

申立書の様式・添付書類の具体的な準備、差押えの範囲・実施方法の判断は、裁判所窓口または弁護士等の専門家へ確認してください。

差押えの上限(給料の2分の1)や将来分の差押え、手続き全体の選び方は養育費未払いの強制執行の流れのページで確認できます。

養育費の取り決めの形と情報取得の申立て
取り決めの形第三者からの情報取得の申立て
調停調書・審判書・判決書債務名義として申し立てられる
強制執行の陳述がある公正証書執行証書(民事執行法22条5号)で債務名義になる
強制執行の陳述がない公正証書・口約束債務名義にならない。ただし養育費の請求権があれば、一般先取特権に基づく不動産・預貯金・振替社債等の情報の申立てができる

よくある質問

公正証書で養育費を決めていれば、銀行の口座情報を取得できますか。

強制執行の陳述がある公正証書は債務名義(民事執行法22条5号)にあたり、預貯金情報の申立てに使えます。預貯金情報の申立てには、財産開示手続を先に行う要件はありません。

調停調書が無く、口約束だけの場合は使えませんか。

債務名義が無くても、養育費請求権者には子の監護の費用に係る一般先取特権があるため、不動産・預貯金・振替社債等の情報は一般先取特権に基づいて申し立てられます。勤務先情報は、債務名義か一般先取特権のどちらかが必要です。

費用はいくらかかりますか。

手数料は1個の申立てにつき1,000円です。預貯金情報・振替社債等情報には、第三者1名ごとに2,000円の予納金が別に要ります。郵便料などは裁判所ごとに異なります。

申立先はどこですか。

債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。財産の種類ごとに別の申立書を作ります。

情報はどのくらいで届きますか。

提出期限の定めはなく、基本的には2週間程度が一つの目安です。

未確認のまま扱っている事項

次の事項は、今回確認した裁判所公式ページには具体的な記載が見当たらず、確認できませんでした。

  • 情報提供命令が発令されてから確定するまでの標準的な日数(債務者の執行抗告期間である1週間を除いた実務上の所要期間)。
  • 養育費以外の理由(婚姻費用分担金)でワンストップ執行手続を使う場合の要件の違いの詳細。婚姻費用分担金に基づく担保権実行は「子の監護に要する費用」を含む合意がある場合に限られるとされていますが、その判定方法の具体例は確認できませんでした。

公式根拠

第三者からの情報取得手続の概要・取得できる情報の種類・申立てできる債権者の条件・申立先・手数料・手続の流れは裁判所: 情報取得(手続の案内)、養育費等のワンストップ執行手続の概要・手数料は裁判所: 養育費等のワンストップ執行手続(第三者からの情報取得)で確認できます(いずれも本文を直接確認、確認日2026年9月18日)。

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